超売れっ子作家の伊坂幸太郎書籍「逆ソクラテス」を読了しました
2021年本屋大賞ノミネート作品で注目された作品なのでご存知の方も多いのでは無いでしょうか?
そんな話題の本作をあらすじと感想、解説も交えてレビューしたいと思います
※ネタバレ無しとなっておりますが、若干内容にも踏み込んでおりますので未読の方はご注意ください
作品紹介
書籍情報
出版社 | 集英社 |
著者 | 伊坂幸太郎 |
発売日 | 2020/4/24 |
ページ数 | 254ページ |
価格 | 定価:1540円 |
作者について
氏名 | 伊坂幸太郎 |
生誕 | 1971年5月25日 千葉県松戸市 |
代表作 | 重力ピエロ アヒルと鴨のコインロッカー ゴールデンスランバー |
受賞歴 | 新潮ミステリー倶楽部賞(2000年) 吉川英治文学新人賞(2004年) 日本推理作家協会賞短編部門(2004年) 本屋大賞(2008年) 山本周五郎賞(2008年) 柴田錬三郎賞(2020年) |
作風 | 現在住んでいる宮城県仙台市を舞台にした作品が多い |
説明不要の日本を代表する小説家ですよね!
私も過去作はいくつか読んでおりますが、非常にスピーディーに読め、読了感が良い作品が多い印象です
本作もそんな1冊となっておりました!
あらすじ
敵は、先入観。
出典amazon商品ページ:https://amzn.to/3tHECmz
世界をひっくり返せ!
逆転劇なるか!? カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える――「逆ソクラテス」
足の速さだけが正義……ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが――「スロウではない」
最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも――「アンスポーツマンライク」
ほか、「非オプティマス」「逆ワシントン」――書き下ろしを含む、無上の短編全5編を収録。
5つの短編小説
本作は前述した通り、5つの短編小説にて構成されています
それぞれの話は独立していますが、繋がりを感じる描写があります
(同じ登場人物が他の短編に出たり、存在を匂わせる表現があったり)
ちなみにタイトルは全て否定形になっていまして、実際に読むと「タイトルにはこんな意味が込められていたのでは?」と考察できて楽しいです!
感想
幅広い世代で楽しめる一冊
前情報無しで読んだのですが、全編において主人公は小学生という作品で少々驚きました
あとがきで「子供を主人公にする小説は難しい」と作者も書かれていましたが、確かに子供視点だと台詞回しや表現の幅がどうしても制限されるように素人目にも感じます
しかし本作はまったくダレる事なく爽快に駆け抜けていくような展開で、子供視点とか些細な事でした
むしろ子供視点での小説だからこそ、幅広い世代が楽しめる小説でした
特に子供の読者にとっては、自身の糧になる良い話になるのではないかと思いました
反対に大人からすると耳が痛い話もありますので、自分を見直すこれまた良い本です
陳腐な表現かもしれませんが、「人生の教科書」的な本でした
逆ソクラテス
「敵は、先入観だよ」
ある生徒に対する担任の対応が先入観による物で、良くない影響をクラスに及ぼしている
そう考えた子供達は、担任の先入観をひっくり返す計画を実行していきます
主人公(平凡)、秀才、クラスのマドンナ、いじめられっ子
ある種の黄金メンバーで繰り広げられる話は痛快で最高でした
伏線回収した時の爽快感は本作中No1でしょう!
作中の「僕はそうは思わない」という言葉は心に刻みたい名言です
かの有名哲学者ソクラテスは「無知の知」つまり「自分は全てを知っている訳では無い、という事を知っている」的な言葉で有名ですよね
本作のタイトルはそんなソクラテスの「逆」、つまり「自分は全てを知っている」と思い込んでいる人間を示唆しているんですね
スロウではない
「ドン・コルレオーネ、やはり、足が速いとモテるんでしょうね」
「うむ。では」「はい」「消せ」
足の速さがクラスのヒエラルキーに繋がる現状を主人公と親友は憂いていました
そんな主人公がリレーで走る事となり・・
「ゴッドファーザー」のセリフを冗談で言い合う、主人公達の愉快なやり取り
未来で主人公が過去を振り返りながら、物語が進行していく巧みな構成
少し異なる視点での「いじめ問題」への切り込み方
私は全短編の中で本作が一番好きな話でした
読み終えた後、私はこのタイトルを深読みしてしまっております
非オプティマス
「私にいい考えがある」
学級崩壊に近い状況のクラスで現状を打破すべく、主人公とちょっと浮いた存在の友人二人で様々な計画を実行していきます
逆ソクラテスで秀才キャラが考えていた計画に比べ、こちらの話では穴だらけの小学生らしい計画で笑えます
学級崩壊の要因ともなっている担任の秘められた過去など、読み応えのある作品となっています
終盤に繰り広げられる授業は見応え充分です!
タイトルの「オプティマス」とは映画化もされた有名作品「トランスフォーマー」に登場する司令官の名前です
「私にいい考えがある」は司令官が作戦立案する際によく言うセリフで、このセリフが出た計画はほぼ失敗するというフラグにもなっています
アンスポーツマンライク
「ごめん、アンスポだったわ」
バスケ仲間5人の過去、現在における交流を描いた作品です
小学校時代から高校、社会人と時代の流れの中で変化していく仲間と、ある事件に焦点を当てた話
正直ご都合主義に感じる部分もありましたが、爽やかな作品だったと思います
逆ワシントン
「やっぱり、最終的には、真面目で約束を守る人間が勝つんだよ」
本作の主人公は少年なのですが、個人的にはそのお母さんがメインだと思ってます
陰湿な事を嫌い、ヒートアップしてクラスで演説を初めちゃうような人で、正直物のワシントンの話を主人公にします
この教えで主人公は振り回される場面もあるのですが、愚直にその教えを守ろうとする主人公にも交換を持てます
ただ、本作は他作品を補完する役割が強いかなーと感じました
ネタバレになるので詳細は書けませんが、短編の中のとある作品とセットで完成する作品だと個人的に思います
まとめ
どの短編も非常に面白い話で、やっぱり伊坂幸太郎は凄いなぁーと小学生みたいな感想になっちゃいますが、本当に良かったです
大人も子供も楽しく読めますし、長編小説は苦手という方も気楽に読める、誰にでもオススメできる作品だと思います!
本レビューが皆様の参考になれば嬉しいです!