第165回 直木賞受賞作として話題のテスカトリポカを読了しました
本屋で並ぶインパクトのある表紙と独自のタイトルで興味を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな話題作をあらすじと感想、解説も交えてレビューしたいと思います
※ネタバレ無しとなっておりますが、若干内容にも踏み込んでおりますので未読の方はご注意ください
作品紹介
書籍情報
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 佐藤 究 |
発売日 | 2021年02月19日 |
ページ数 | 560ページ |
価格 | 定価:2,310円 |
本作は完成に3年以上を費やした560ページにもおよぶ超大作となっております!
作者について
氏名 | 佐藤 究 (さとう きわむ) |
生誕 | 1977年9月13日 福岡県 福岡市 |
趣味 | フィギアやプラモデルの組み立て |
代表作 | QJKJQ Ank: a mirroring ape テスカトリポカ |
受賞歴 | 第62回江戸川乱歩賞 受賞 第34回山本周五郎賞 受賞 第165回直木三十五賞 受賞 ほか多数の賞を受賞 |
凄く怖そうな見た目をしておられますが、元々は「佐藤憲胤」名義で純文学作品を書かれていたんですね
インタビュー記事でも「売れない純文学作家時代、不良在庫だったという負い目がある」とありましたが、アルバイトをしながら小説家を続けておられたようです
芽が出ずに大変苦労されたんですね・・
そこから改名し数々の賞を受賞、そして本作「テスカトリポカ」で文学界の歴史に残る快挙を成し遂げられました!
W受賞さらには重版出来!
本作「テスカトリポカ」は第34回山本周五郎賞および第165回直木賞のダブル受賞を達成しました
これは17年ぶり史上2度目の快挙との事で、どれほどの偉業か分かりますね!
(ちなみに、この偉業を達成したもう1人は、熊谷達也さんの「邂逅の森」です)
発行部数は電子書籍も累計10万5千部とかなりの売れ行きです
今後さらなる重版出来が期待できますね!
あらすじ
鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元!
KADOKAWA社 HP:https://www.kadokawa.co.jp/product/322003000419/
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。
本作はクライム・ノベル、つまり「犯罪小説」となっております
あらすじからも分かる通り、かなりダークな内容となっております
メキシコ北西部から始まる物語
本作はメキシコのシナロア州に生まれたルシアという少女の視点から始まります
読者は麻薬カルテルに支配された町で生きる少女の波乱万丈な半生を追う事で、メキシコにおける麻薬犯罪の恐ろしさの一端を知ることができます
そこから舞台は日本へ移ります
舞台は日本の川崎、主人公 土方コシモ
本作の中心地となる川崎を舞台に主人公 土方コシモ青年の話が始まります
コシモの少年時代は読んでいて非常に辛く胸が痛みます
そしてある事件を区切りとして、再度メキシコへ舞台は飛びます
もう1人の主人公 <粉>バルミロ・カサソラ
再びメキシコ、舞台はタマウリパス州へ
ここでは麻薬戦争が勃発しています
そこで登場する<粉 エル・ボルボ>と呼ばれるバルミロが本作のもう1人の主人公と私は思っています
彼の壮絶な戦い、そしてその後の行動が本作の重要なキーになっていきます
ちなみに彼の通り名<粉>の由来は、液体窒素で凍らせた腕や足をハンマーで粉々にする拷問を好むからだそうです・・怖い
この先は是非本編でお楽しみ下さい!
(ここまででも結構なボリュームですが、全然冒頭部分ですねw)
感想
裏社会における犯罪行為の緻密な描写とアステカ文明への深い造詣
登場する犯罪の描写、緻密な犯罪計画、犯罪者達の描写など全てがリアルに感じます
なぜここま緻密な描写が書けるのだろうと思っていましたが、インタビュー記事で丸山ゴンザレス氏など裏社会に精通した友人から犯罪社会の実態について教えて貰っていると答えておられました
実際の現場を知っている人へ取材を行っているのですから、描写がリアルになるのは当然ですね・・
また本作の重要なファクターとなるのがアステカ文明です
本作の根幹をなす部分で、かなりのページ数を割いて非常に深い所まで描かれます
これが退屈かと思えばまったくそんな事は無く、あまり馴染みの無いアステカ文明にすっかり魅了されます
犯罪、アステカ文明、テスカトリポカ・・これらが深く交わる事で本作がただの犯罪小説では無い作品となっている所以では無いかと思います
本のボリュームを感じさせない面白さ
本作は550ページを超える超大作ですが、夢中になって読んでしまいました
終盤はこの物語が終わってしまう、もっと読み続けたいと思える作品でした
本当に面白かったです
内容はダークで凄惨な描写もありますので、勿論苦手な方はおられるかと思います
しかし、出来ることなら是非とも読んで頂きたい作品です
(お子様にはオススメしないです・・R-15かR-18ぐらいですかね・・)
テスカトリポカとは?
タイトルにもなっている「テスカトリポカ」ですが、アステカ神話に登場する神の名です
その名の意味は「煙を吐く鏡」
最高神として崇められておりますが、人々はその名を呼ぶ事を怖れ「われらは彼の奴隷」「夜と風」など呼ばれています
ちなみにテスカトリポカの絵を見ると装飾が凄いですが、これはアステカ暦で日を示す20のシンボルを身に纏っています
ワニ | 死 | サル | ハゲワシ |
風 | シカ | 草 | 動き |
家 | ウサギ | 葦 | 火打石 |
トカゲ | 水 | ジャガー | 雨 |
ヘビ | イヌ | タカ | 花 |
つまりテスカトリポカは暦を身に纏う「時の超越者」であり、全ての支配者という事を表しているんですね・・
他にも様々な言い伝えやエピソードがあり、調べていて楽しいです
本作をきっかけにアステカ神話にハマってしまう人がいるかもしれませんね!
まとめ
語りたいポイントが人によって様々な小説だと思います
犯罪小説としても語りたいですし、アステカ神話に関する事項についても語りたい
または日本の社会情勢についても語りたくなる、そんな一冊でした
分厚さに圧倒され手が出ない方もいらっしゃるかもしれませんが、
是非、厳つい本に怯まずに読んで欲しい1冊です!
この記事で少しでも興味を持って頂けたら嬉しいです!